前ページからの続きです。

週刊文春の記事から、イチロー選手の道具に対する意識について紹介します。


イチロー選手は、道具も「同じもの」を好みます。

「この二十年以上、基本的に同じスペックのバットを使い続けています。通常よりも芯が狭いバットで、ミートすればより飛ぶ一方、芯を外すと凡打となるリスクがあります。
 
彼のバフォーマンスの源はどれだけ正確にイメージした通りに身体を動かせるかということなので、バットの芯が広いというのはデメリットのほうが多いのでしょう」(前出のメジャー担当記者)
 

イチロー選手は移動の際、除湿剤の入ったジュラルミンケースでバットを持ち歩きます。バットに影響する湿度を管理するためです。
 
イチロー選手のバット製作に長年携わり、ミズノテクニクスの元担当者でもある久保田五十一(いそかず)さんがエピソードを紹介されています。

2002年にアリゾナのキャンプ地でお会いしました。そのときイチローさんはバットの置き方にも注意を払っていました。
 
ネットに立てておくことが多いですが、横にする時はクラブを広げて芝生に直に触れないように置いていました。
 
特にボールが当たるヘッドの付近はグラブの中に優しく包み込むようにしていたのが印象に残っています。

オリックス時代の話も。

イチローさんは一度だけバットを地面に投げつけてしまったことがあるそうです。
 
するとオリックス担当のミズノの社員から「申し訳なかった。久保田さんにお詫びを伝えておいて欲しい」と言っていたと聞きました。
 
そこまで大切にされていたのかと嬉しくなりました。

もちろん、こだわっているのはバットだけではありません。
 
スパイクやグラブも同様です。

スパイクは、長年トレーニングを指導してきたトレーニング研究施設『ワールドウイング』の小山裕史代表が開発した「ビモロスパイク」という特注のものを使用しています。
 
グラブは必ず試合が終わったあとに自分で磨いていますね。チームメイトがビールを飲んだりしているなか、イチローはいつも黙々と磨いています。(前出のメジャー担当記者)
 

このクラブを磨く作業は、オンとオフを切り替えるルーティンにもなっています。

「道具を大切にするということだけでなく、オンとオフの切り替えになっていますね。その日の最終的なルーティンを丹念に行いながら、反省もする。
 
そしてスタジアムを出たら、その後は仕事を家に持ち帰らない。グラブを磨く作業で仕事の全てを終わらせているのですね」(同前)

以上、週刊文春 2016年 6/30号(Amazon)33~34ページから、イチロー選手のルーティンについて紹介しました。
 
野球選手のみならず、その他の仕事にも応用できる考え方かもしれません。