どんなに上手い投手でも、調子の悪い時はあります。
 
そんな時は悪いなりに投げつつ、可能であれば投げながら調子を上向かせたいもの。

そのやり方は投手によっていろいろあり、雑誌「トレーニング・ジャーナル(以下TJ)」に現役時代の桑田真澄投手の記事がありました。
 
NPO神経現象学リハビリテーション開発機構の河本英夫代表理事が、調子が悪い時の桑田投手の対処法を解説されています。
 
一部抜粋して紹介します。
 
(このコンテンツはトレーニング・ジャーナル2013年8月号13~14ページを参考にしました)
 

月刊トレーニング・ジャーナル2013年8月号

調子が悪い時に変える選択肢を増やしておく

まず、自身の不調に対処するために重要なことは何なのでしょうか?

選手自身が「今日は調子がでない」という時に変えられる選択肢を多く持っていることが重要です。

調子が悪い時は、何かを変えなければ何も改善しません。
 
「ここを変えれば良い」とわかっているポイントが多いほど、不調に対処しやすくなります。
 
そのポイントを多く持っていたのが桑田真澄投手なのです。

その選択肢をおそらく最も多く持っていたのが、現在東京大学野球部の特別コーチをしている桑田真澄氏でしょう。
 
桑田氏はアスリートとしては決して恵まれた体格とは言えません。よって、ただ頑張るだけでは強い球や良い球はなげられないでしょう。
 
さらに、コントロールがうまくいかない日も当然あるはずです。
 
それでもプロとして登板したからには、回を重ねながらその日通用するピッチングをしなければなりません。

「調子が悪いなりに投げる」「どうにかゲームを作る」必要があるわけです。
 

 
それでは、具体的に桑田投手はどこを変えるのでしょうか?

桑田氏はそういうとき、引き手側についてだけでも、肩・肘・手首、さらに小指と親指、と少なくとも5つの選択肢があるそうなのです。
 
思うようにいかなければ、そのうちの一つ、たとえば小指を少し曲げてみるといったように選択肢を使って試行錯誤する。
 
もちろん今日はどうにもならない、何をやってもだめだという日もあるそうですが、それでもいくつかを試していくうちに、その日の調整点が見つかり、ゲームを作っていくことができるようです。
 
つまり、本人の中の調整変数を多くしておきましょうということです。

しかしいろいろ試してみても、うまくいかないことはあります。
 
さらには試したからといってすぐ改善できるわけでもないようです。

とは言え、どれをやればうまくいくことがあらかじめ決まっている、ということではありません。その日の体調や、トレーニングのきつさといったことによって、今日はここを使えばうまくいくかなと思って変えてみても、あまりうまくいかないこともあるそうです。
 
それでもたくさん選択肢を持っているということは、別の対処の仕方を持っているということなので、本人の中でも選べる要素があります。
 
桑田氏も3イニング、4イニングかけて調整していくそうです。

桑田氏によると、自身の調子はジャッジにも影響するのだとか。

さらに、いいコースに投げても、本人のバランスが悪ければちょっとストライクゾーンから外れたとしてボールと言われるそうです。
 
しかしバランスが整ってくると、同じコースになげてもその回からストライクと言ってくれる、ということらしいです。
 
審判も判定の基準は、とくに微妙な球に対しては、毎回ほんの少しずつ振れるでしょう。
 
つまり桑田氏は、審判の、自分が投げる球の見方についてもバランスを整えているらしいのです。そうなれば、打者は打てなくなります。
 
そういう「打てなさ」をつくり出すのが、自分の調整能力と、第三者、投球で言えば審判が自分の味方になるような調整を行っているらしいのです。

調子が悪い時に何かを変えたところで、さらに悪くなってしまうこともあります。
 
なので「ここを変えるとこうなる」という体験を日頃の練習で積み重ねてくことが大事ではないでしょうか。
 
それが不調の時に変える選択肢を増やすことになるわけです。
 
スランプの未然防止にもつながるでしょう。
 
ここでは投手の例を挙げましたが、バッティングでも同じ考え方は可能ではないでしょうか。
 
今後の練習でも意識してみて下さい。