野球に限らず、現代のスポーツで体幹を意識するのは常識となっています。
 
当サイトでも、体幹に関するエントリーは複数作っています。
 
体幹関連エントリー一覧

雑誌「Tarzan」の2015年11月12日号に、「腹を入れるための体幹トレーニング」という特集がありました。
 

 
プロ野球北海道日本ハムファイターズの中垣征一郎トレーニングコーチによる、体幹の使い方解説記事です。
 
中垣コーチは、「腹を入れる」「腹が抜けないようにする」という表現で体幹を意識するよう指導されていて、この「腹を入れる」とはどういうことか、ターザン 2015年11/12号(Amazon)92~95ページから紹介します。

「腹を抜かない」脚の力を上体に伝える

ここで前置きをひとつ。
 
「腹を入れる」習得には実践が必要であり、ここではあくまで感覚的な説明に終始しています。
 
文章で書いてもピンと来ないかもしれませんし、このコンテンツでは画像もありません。「腹を入れる」のさわり紹介という意味で、以下をお読み下されば幸いです。
 
まずは、中垣コーチの解説を。

体幹の”強さ”だけでは、どうしてもうまくいかないんです。僕は選手には”お腹が抜けないように”という言葉をよく使うのですが、ほとんどの選手は最初はこれだけではピンとこない。
 
だから、実践を通して時間をかけてこの状態を理解してもらっています。
 
たとえば、スクワットを行うとき、骨盤が前傾しすぎると腹が抜けた状態になる。
 

 
大きな力を発揮しようとすると、骨盤は前傾し、脊柱は前湾しすぎてしまう選手がプロ野球選手でも多く、お腹が前に抜けたような姿勢になってしまいます。
 
下肢が地面を捉えたら、うまく上へと力を伝えることで、爆発的に力を発揮することができる。
 
そのためには、カラダの中心で力を発揮するイメージが重要。これがうまくいかないと下肢で作られた力が跳ね返ってこなかったり、上体や上肢に伝えられなくなってしまいます。

骨盤が前や後ろに傾き過ぎていると、脊柱が大きく前後に湾曲してしまい、下で蓄えた力が上体に伝わらず逃げてしまいます。
 
そのため、脊柱(特に腰椎周辺)の前湾・後湾が大きくなりすぎず、体幹の強さで適切な姿勢を保つのが理想です。
 
中垣コーチの解説を続けます。

下肢から上体へ力を伝えやすくするには、体幹部のポジションがどうなっているのかが重要。
 
そして常にいいポジションで動かすことができれば、ピッチングでも、バッティングでも、瞬発的に大きな力を発揮するために有利に働くでしょう。
 

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体幹の正しいポジションとは?

それではその正しいポジションとはどういう状態なのでしょうか?

それぞれの人の形態によっても違いますが、たとえば、床に仰向けになって膝を立て、腰が完全に浮いてしまった状態のような人は、反りすぎです。
 
反対に腰がべったりと床についてしまうなら骨盤は後傾、腰椎は後湾しすぎといえるのではないでしょうか。
 
腰が少し床から浮いているくらいがひとつの目安ですね。

静止した状態はこの目安でいいとしても、当然ながらスポーツでは体を動かします。
 
動作中でも正しい体幹部のポジションを崩さないためには、やはり意識と実践の繰り返ししかないようです。

動きながら見つけてもらうしかない。
 
フィールドの上でお互いを観察して”今のいいよね”とか、他人の観察とすり合わせたり、うまくいったときの運動感覚から”ああ、これか”というように、本来は個人が気づいていくしか動きは身につかないのではないかと思います。
 

実際の野球動作での解説「Tarzan」では画像あり

以下は、画像の解説文を抜粋してまとめます。
 
画像が無いのでわかりにくいですが、ポイントはつかめるのではないでしょうか。

大谷翔平投手のピッチング

胸が開き、一見、背すじが反っているように見えるが、骨盤が前後傾しないので腹はまったく抜けていない。だから力が伝わり、150kmオーバーの速球が投げられる。

中田翔選手のバッティング

カラダが後方に残って、右肩が大きく下がっているように見えるが、運動中に適切な姿勢をとっているので、腹が抜けずに打てる。これができるから、ホームランの連発となる。

腹を入れるためのジャンプ

・腰に手を当てて膝、股関節、足関節を曲げて沈み込み、一気に垂直方向へジャンプする
 
(悪い例)腰を沈ませたときに、骨盤が過度に前傾してしまい、カラダが反っているためにジャンプしたときに腹が抜けて、強く跳べない。
 
(良い例)適切な姿勢を体幹で保っている。ジャンプしたときも骨盤と脊柱の位置関係には変わりがなく、強く跳べる。
 

腹を入れるためのメディシンボール・ジャンプ投げ

・両手でメディシンボールを持って膝、股関節、足関節を曲げて沈み込み、一気に垂直方向に跳び上がり、ボールを頭上に
 
・カラダの下降と脚の関節の屈曲に合わせ、腕を前方に振り抜き、ボールを地面に強く叩きつける
 
(悪い例)ボールの重さで、カラダが反ってしまう。ボールが前方に移動するのに合わせ、今度は背中が丸まって腹が抜け、強く投げられない。
 
(良い例)体幹部のポジションが正しく保たれている。上体を前傾させるときも、骨盤と脊柱の位置関係はそのまま。強く投げられる。

腹を入れるためのメディシンボール振りかぶり投げ

・左足(左利きは右足)を地面から浮かせて、一歩前へ。このとき、頭上に上げたメディシンボールを、カラダを前傾させて、出した脚に体重を乗せ、タイミングよく腕を振り下ろし、地面に叩きつける
 
(悪い例)メディシンボールの重さでカラダが反ってしまう。ボールが前方に移動すると、腰が後方に引け、腹が抜け、強く投げられない。
 
(良い例)足を前に出した時に骨盤から背中までがまっすぐ。股関節から前傾し、骨盤と脊柱の位置関係は最後まで同じ。強く投げられる。

腹を入れるためのフロントランジ

・腰に手を当てて立ち、左足(左利きは右足)を前に振り出すようにし、太腿と地面が平行になるぐらいの高さで強く踏み込み、戻る。
 
(悪い例)左足を上げたとき、カラダが後方に傾く。すると足を地面につけたときカラダが反る。腹が抜けて沈み込みをコントロールできない。
 
(良い例)足を出したときに骨盤と脊柱が正しいポジションにある。踏み込むときは骨盤と脊柱の位置関係が変わらず、体幹がうまく機能して腹が抜けずに強く踏み込むことができる。
 

ピッチング

(悪い例)投球に入ったときに脚の沈み込みが足りない。一歩前に踏み出すときに、胸を張ろうとして体幹が後傾してしまう。そこから体幹を前に倒していくため、カラダが反ってしまう。すると下肢からの力が抜けて、上肢に伝わらない。
 
また、反った状況を立て直すために体幹ばかりが先行して腕の振りが遅れてしまう。
 
(良い例)膝をしっかりと折りながらも、骨盤の上に正しく脊柱が乗っている。そのまま脚を一歩前へ。体幹がうまく働き、下の力が上へ伝わっている。
 
腕も遅れずに振り出せる。腹が抜けていないので、力が上肢に伝わって、フィニッシュでは体幹が深く前傾し、腕の振りも鋭くなる。

バッティング

(悪い例)初動から体幹が後方へと倒れてしまっている。そのために、バットを振りだしたと同時に背中が反ってしまい、力が後方に抜ける。反った状態のままバットを振り抜くので、カラダの中心が定まらず、バットの軌道が一定になりにくい。
 
(良い例)一見、体幹が後方に倒れているようだが、骨盤の上にしっかりと脊柱が乗っているのがわかる。ベルトと両肩のラインが平行になっているのが証拠。バットを振り始めてもその関係は続く。肩とベルトが平行で、体幹が正しいポジションに収まっている。
 
バットを振るというよりボールを叩きつける感覚で、体幹が安定するので素振りのスピードもアップする。


 
Tarzanの記事では画像付きで解説されています。
 
理解が深まるので、関心のある方は引用元であるターザン 2015年11/12号(Amazon)92~95ページを参照して下さい。