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雑誌週刊文春 2016年1/7号から、山本昌氏と阿川佐和子さんの対談を紹介しています。
 
現役時代の山本昌氏は、6月頃に必ず調子を落としていたそうです。


克服しようと努力をしたそうですが・・・。


 
阿川 いつ頃から引退すると心に期してらっしゃったんですか?
 
山本 想像するということであれば、もう十年くらい毎年、七月になるたび考えていました。
 
阿川 十年も?四十のときから?
 
山本 野球選手として四十歳で引退を考えるのは普通ですよね。僕は毎年、六月頃が調子悪いんですよ。すると「あと百日くらいしかユニフォームを着れないかもしれない」と思うようになるんです。これだけ長くやったのに・・・。
 
阿川 あとちょっとしか残っていない。カッコ悪く終わりたくない・・・。
 
山本 はい。そう思うと、八月以降いつも調子が良くなるんです(笑)。
 
阿川 なぜ毎年六月頃に調子が悪くなるんですか?気候の影響とか?
 
山本 わかんないんですよ。若い頃はそのリズムを変えようと思って、調子が早く上がるようにキャンプで投げ込む量を増やしたりしたんですけど変わらなくて・・・。あるときにすっぱりあきらめて、夏以降絶好調のときがあることをせめてもの拠り所にしようと。
 
阿川 それでシーズンが終わったときは「来年もやろうか」って気分になっちゃうんですね。
 
山本その繰り返しでしたね。


 
現役生活が長かった山本氏ですが、登板日は現役最後の日まで緊張したそうです。
 
阿川 もともと緊張しやすいんですか?
 
山本 めちゃくちゃ緊張します。清掃員の方でも「今日の先発は昌さんだ」ってわかるくらい(笑)
 
阿川 どんな顔してるんだろ(笑)
 
山本 わかんないです。ただ、試合前の練習が終わったあとのルーティンとしてグラブとスパイクの手入れをするんですが、そのときにあまりに悲壮感が漂ってるらしく。
 
阿川 誰が見てもわかる(笑)。最後の日も周りからはなにか言われました?
 
山本 後輩から「緊張してるんですか?打者一人じゃないですか」って。「一人でも緊張するんだよ」って返しました(笑)。でも振り返ると緊張感のおかげで力が出たところもあるんですよ。僕はブルペンで思いっきり投げても130キロしか出ないんですね。
 
阿川 それが本番だと?
 
山本 試合だと138キロくらい出るんです。
 
阿川 アドレナリンの力?
 
山本 かもしれません。それで最後の日も、試合前は、一人だし別に打たれても構わないって思ってたのに、マウンドに上がると「やっぱり打たれたくない」ってなるのは不思議でした。急にカアッてくるというか・・・。
 
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