王貞治氏がホームランを量産した一本足打法。

いまではほとんど見られなくなりましたが、平成28(2016)年、東海大学から育成契約で中日に入団した渡辺勝選手が、一本足の”フラミンゴ打法”に挑戦しています。


渡辺選手は、王氏を育てた荒川博氏に師事しており、いわば「王の正統な後継者」なのです。
 
雑誌週刊現代の平成28年4月16日号に、荒川氏の特集がありました。
一部を抜粋して紹介します。

「教えられたまま受け入れる」重要性

荒川氏が初めて渡辺選手と会った際の様子を語ります。

渡辺が中学3年のとき知人の紹介で僕が主宰する「荒川道場」に来たのが始まり。実力は普通だったけど、高校入学までの約半年間、こまめにメモしたりして熱心だった。
 
ほかとは違う僕の教えを、そのまま受け入れていた。

「横振り」を心がけていた渡辺選手は、荒川氏の「縦に切るように打ちなさい」という指導に面食らいました。

でも、言われた通りに打ってみると、打球の力強さが全然違いました。それで週に三日は通いました。
 
高校、大学では日本学生野球憲章の規定があって教わることはできませんでしたが、荒川さんの著書をヒントに考えてやってきました。
 
荒川さんに教わってなければ、プロには入れなかった。
 

荒川氏が王氏を指導していた時、王氏は同僚の選手にこう言ったことがあるそうです。

荒川さんは合気道や居合に行って習ったことを、噛み砕いて教えてくれる。俺たちはそのまま習えばいい。
 
自分で勝手な解釈をしていたら、うまくならないぞ。

この王氏の言葉を知った荒川氏の反応は、以下のようなものでした。

王はうまくなる方法をわかっていた。「教えた通りにやれ」と言われても、できないとき、凡人はすぐに自分なりのやり方を始めちゃう。
 
辛抱が出来ない人は成功しない。できるまでやらないといけない。何万回、何十万回とね。

榎本喜八氏「プロ野球に入るためには?」荒川氏「朝5時に起きて…」

千本安打、2千本安打の最年少記録を持つ榎本喜八氏(故人)は、高校一年の時に荒川氏のもとを訪れ、「プロ野球に入るためにはどうしたらいいんですか?」と質問しています。
 
それに対して荒川氏の答えは・・・

朝5時に起きて、学校に行く前に500回バットを振れ。それを3年続けたら俺がプロ野球に入れてやる。

榎本氏は高校3年の11月にまた荒川氏を訪れ、「3年間振ったからプロ野球に入れて下さい」と直訴。その後の入団テストでものすごい打撃を披露し、即契約となりました。
 

 
荒川氏は、現在指導する渡辺選手にも球史に残る選手になってほしいと考えています。

渡辺には打率4割を打たせたい。王はホームラン世界記録の756本の達成を優先して、それを目指せなかったから。
 
プロになった今はアドバイスもできるし、僕を信じれば、渡辺は4割打てるよ。

荒川氏の情熱を受け、渡辺選手も「僕はこの打ち方で、最後まで勝負します」と断言しています。
 
このコンテンツは雑誌週刊現代2016年4/16号(Amazon)197~201ページを参考にしました。