2017年のWBCでは、侍ジャパンの快進撃が続いています。
特に打撃陣は好調で、「誰かが打てなくとも、代わりに誰かが打つ」という、沈黙とは無縁の打線が本領を発揮しているのです。
今年の侍ジャパンの四番は筒香選手。
他の選手と共に活躍していますが、大会が始まるまで小久保監督は「誰を四番にするか」で葛藤していたようです。
雑誌「週刊文春」に連載されている、鷲田康氏の「野球の言葉学」でその様子が記事になっていました。
2016年の3/17号より、一部を抜粋して以下に紹介します。
小久保監督が「四番筒香選手」に迷う理由
そもそも筒香選手は、「侍の四番」最有力候補でした。
「昨オフにメジャーリーガーも参加するドミニカのウインターリーグに武者修行に行くなど、野球に取り組む姿勢は今の若手ではピカイチ。
ウインターリーグでは慣れないメジャー球を使って、向こうの投手独特の動くボールに対応できる技術を磨いてきた。
来年のWBCでは最も頼りになる打者の一人です」(スポーツ紙遊軍記者)
2016年3月5日、6日に行われた侍ジャパンと台湾の強化試合でも筒香選手は大活躍しており、侍ジャパンの四番として文句なし、と言いたいところですが、小久保監督には別の考え方があったようです。
「小久保監督の決断がつかないのには、いくつかの理由があるようなんです」
こう語るのは同監督に近いNPB関係者だった。
「ひとつは自分がそうであったように、四番は右のスラッガーという強いこだわりがあること」
実は球界には根強く右打者最強説というのがある。
そもそも左打者は右打者より数歩分、打席が一塁に近く、逆方向に流し打てば打率を稼ぎやすい有利さがある。
それに比べて右打者はしっかりした技術を身につけないとなかなか高打率は維持できないため、右で結果を残している打者こそが最強だという考えだ。
確かに左打者の筒香はチャンスで左方向を意識した打球が多く、元ヤクルト監督の野村克也さんも「四番のバッティングではない」と不満を漏らしている。その結果、ジャパンの四番論争になると、ノムさんもあくまで「四番は中田」と主張する一人でもあるのだ。
管理人としては「右でも左でも、成績が良ければ関係ない」という考えなのですが、プロの世界を長く経験した人の「こだわり」なので、プロ経験者にしかわからない根拠があるのでしょう。
山田哲人選手・柳田選手を含めた打順
小久保監督には別の理由もありました。
「それともう一つはソフトバンクの柳田の存在です」(前出・NPB関係者)
今回もケガの影響で召集を見送られた柳田だが、小久保監督の頭には三番に柳田を起用してヤクルト・山田哲人内野手(23)を一番、という構想があるという。
「そこで四番を筒香にすると三、四番に左が並ぶので、右の中田を挟んで柳田―中田―筒香という並びを理想としているんです」(同前)
侍ジャパンの四番は誰にすべきか?このコラムを書いた鷲田氏は、このように結論付けています。
一発か三振だがトータルで本塁打数の伸びる中田は長いペナントレース向きの四番ではあるが、一発勝負の短期決戦では最低でも犠飛を打ち上げる信頼感こそが四番の条件であるはずだ。
「チャンスに強くて、打点が欲しい場面で挙げられる打者。信頼されて打席に立てる打者」
筒香が語った四番打者像である。今の日本代表でこの結果を出しているのは、筒香本人しかいないのは確かである。
このコンテンツを作製している時点(2017年3月16日)で、侍ジャパンの成績は無傷の6連勝。筒香・中田両選手はじめ、その他の選手が日替わりで活躍しています。
筒香選手を四番に推した鷲田氏、そして自身のこだわりにとらわれず、筒香選手を四番に据えた小久保監督は正しかったと言えるのではないでしょうか。