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イチロー選手と宣之さんの「準備」は、野球の練習だけではありません。
宣之さんは、イチロー選手にこんな準備も実践させていました。
肉体的準備だけではなく、同時に精神的な準備も必要。一つの例として、私はこういうこともやった。
体外試合の対戦相手が決まると、私は一週間から十日前にイチローと一緒にその球場を見に行くんです。
初めて見る景色の中でプレイすると子供は気持ちが落ち着かなくなってしまうからです。
一方で、私はいつもイチローに
「人間は緊張するのは当たり前。どんどん緊張せえ。ガチガチになって、なおかつ素晴らしい力を発揮するのが一流選手だ」
と言い続けていました。
これは初代若乃花の言葉。初代若乃花は鋼のような体で精神的にも強く、私は大ファンでした。
イチロー選手の食習慣については、「偏食」ともとれる報道を目にします。
この件について、宣之さんはどう考えていたのでしょうか?
プロスポーツ選手を目指すのであれば、食事の内容にはかなり神経質になってもおかしくないはずですが・・・
イチローは、食事に関してはわがままに育ちました。自分の好きなモノしか食べない。焼肉大好き、お寿司大好き。
(中略)
でも、野菜は全然食べない。子供時代によくイチローに言ったのは
「今は好きなモノをたくさん食べて大きくなれ。今は偏食でもいい。でも、お前はプロ野球選手になりたいんだろ。だったら将来、かならず体が野菜を要求する時が来るだろう。その時は食べなくっちゃ他の選手に負けてしまうぞ」って。
食に限っていえば、イチロー選手はかなり自由だったといえそうです。
イチロー選手が中学生になっても、宣之さんの献身は続きます。
中学に入学してからも私は付きっきりでした。午後三時に仕事を終え、三時半に練習場を訪れる。
町内では「なんだ、あの親父は。仕事もしないで」と評判でした。
高校の寮に入る前日まで、毎日寝る前、イチローの足の裏を揉んでやっていました。だから、私はイチローより早く寝たことはないんですよ。
次のページでは、イチロー選手が高校に入学してからのエピソードを紹介します。
(このコンテンツは週刊文春 2016年 6/30号31~32ページを参考にしました)
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