プロの世界では、ポストシーズンでもない限り「中3日」の先発ローテーションはまず聞かなくなりました。
しかし高校野球をはじめとするアマチュアの世界では珍しくありません。
「スポーツ医・科学の立場から考える野球技術の大原則」に、「中3日」の疲労度について解説がありました。
著者の伊藤博一帝京平成大学教授による解説を、86ページから一部を抜粋して紹介します。
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スポーツ医・科学の立場から考える野球技術の大原則
中3日では疲労回復に不十分 フォームが乱れる原因に
結論から書きますと、中3日では疲労を十分に解消するのは難しいようです。
ある投球数を超えると、ピッチングフォームが乱れてくるのです。
まずは理想のフォームについて伊藤教授の解説です。
肩関節最大外旋位(肩関節が外側に最もねじられた状態)からボールリリースまでのことを加速期といいますが、この加速期に下腿を反投球方向へやや傾けた状態でヒザ関節を強く伸展するのが熟練者のオーバースローの特徴です。
加速期にヒザ関節を強く伸展することで体幹部の下端(左の股関節)は押し上げられ、体幹部は回旋を含む前傾動作を効率よく遂行できるようになります。
中3日で投げると、序盤はこの理想的なフォームを維持できますが、投球を続けるうちに徐々に崩れてきます。
準決勝から中3日の登板間隔で決勝に臨んだこの投手は、30球目あたりまで熟練者のオーバースローの特徴が見られていました。
しかし、50球を超えたあたりから、下腿角度・体幹角度・加速期ヒザ関節伸展角度・ボール初速度に断続的・連続的な乱れが生じ始め、これらの乱れが相手打線に捕まるきっかけになったと考えられます。
ヒザ関節の動作はステップと密接に関わるので、フォームの乱れはステップの異変が原因なのでは?とも考えられますが…
この調査研究では、下腿とヒザ関節の動作に影響を与えることが報告されているステップ幅を分析項目に加えました。
しかし、準決勝と決勝において、ステップ幅に乱れは生じませんでした。
特に、準決勝では、中盤から終盤にかけてステップ幅はむしろ好転しており、この投手はステップ幅の乱れが生じにくいタイプと考えられます。
伊藤教授は乱調の原因は疲労にある、と推測しています。
決勝で50球を超えたあたりから投球動作やボール初速度が大きく乱れ始めた一因として、準決勝での投球過多(99球)による疲労が中3日の登板間隔では十分に回復していないことが考えられます。
この一例だけで「中3日では疲労は抜けない」とは断言できませんが、その可能性は高いと言えそうです。
伊藤教授は以下のように結論づけられています。
・中3日の登板間隔では50球を超えると投球動作やボール初速度が大きく乱れる
・中3日の登板間隔は疲労回復に不十分である可能性が高い
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