守備の一連の動作を「流れるような」と形容することがあります。

ひとつの理想形として使われることが多く、”流れるような守備の動作”を意識している選手も多いでしょう。


名手・井端弘和選手の場合、この「流れるような」は合わなかったそうです。
 
その代わりに、ある意識を心がけることでプレーに安定感が出ました。
 
「プロ野球守備・走塁バイブル」の19~21ページを参考にしています。

「流れるような守備」は無理?

井端選手が最初に手本としたのは、”流れるような守備”の久慈選手でした。

プロ入り後、まずお手本にしたのは、久慈(照嘉)さんでした。阪神から移籍されてきて、中日入団年が同じで、守備練習の際も、背中を見ながら勉強させていただきました。
 
久慈さんのプレーを一言で表現すると、”流れるような守備”でしょう。

久慈選手の動きはまさに理想形でしたが、井端選手にとっては違和感のあるものでした。

一連の動作で捕球からスローイングまでできてしまうのですが、しばらくして僕にはちょっとそこまでは無理だなと感じるようになりました。
 
全て理想の捕球姿勢で捕れるわけではありません。それでも流れのままで行ってしまうと、慌てたようなスローイングとなり、結果、ミスにつながりやすい。
 

堅実な守備を実現するため、井端選手は独自の考え方を模索します。

「捕る。キャッチボール」の意識で守備に安定感が 川相選手をヒントに

試行錯誤の末、井端選手はこの結論に至りました。

いかに正確なスローイング、慌てないように投げるかを考えて、僕が行き着いたのは”捕る。キャッチボール”と分けて考えることでした。

この考え方にも、参考になる選手がいました。

ヒントにしたのは川相(昌弘)さんです。04年に中日に移籍してこられたときにプレーを見て、勝手に解釈しただけなのですが、スローイングがキャッチボールと似ていたので、”捕る。キャッチボール”かなと。
 
これ以降、僕には捕ってからスローイングという意識はなくなりました。捕球したら、あとはキャッチボールの意識。
 
このように分けて考えた途端、プレーに安定感が出てきたように思います。
 

「捕る。キャッチボール」とは、極めて単純な考え方のように思えます。
 
しかし守備の名手・井端選手が辿り着いた境地は、一般の選手にも大いに参考になる意識なのではないでしょうか。