雑誌「週刊文春」2016年6月23日号に野球解説者で「盗塁王」の福本豊さんと、大和ハウス工業の樋口武男会長の対談記事がありました。

プレーに対する福本さんの考えなどがわかるので、一部抜粋して紹介します。

盗塁だけじゃない 長打力を養った”腰から回す素振り”練習

福本さんは松下電器からドラフトで阪急に入団しますが、身長が168cmと体格に恵まれていなかったため、周囲の評価は低かったそうです。
 
しかし猛練習を重ねて頭角を現し、二年目にはレギュラー、そして盗塁王を獲得しました。
 

 
盗塁ばかりが注目される福本さんですが、ホームランも208本打っており、長打力もありました。
 
小柄な福本さんが長打を打てたのは、当時の西本幸雄監督の熱心な指導のおかげなのだそうです。

西本さんが「手だけの力じゃ知れてる。パットは腰で振るもんや」と言って手ずから教えてくれました。
 
僕のバットの先を押さえて振らせない。すると腰が先に回ってからバットが出る。「そう、それや!」と。
 
シーズンオフに毎日、言われたまんまの腰から回す素振りを繰り返したら、スイングがころっと変わりましたね。

この西本監督の指導が、通算安打数2543本、ホームラン数208本で名球会・野球殿堂入りという輝かしい実績を残します。
 
そして福本さんの代名詞・盗塁数は、20シーズンで累計1065個を記録(盗塁の通算成功率は7割8分)。特に昭和47年にはシーズン106盗塁を達成していて、これは今後まず破られない記録とされています。

盗塁に必要な「3S」最も大事なのは?

これだけの盗塁を決めるからには、やはり福本さんは足が速かったのでしょうか?

僕よりも速い選手はいました。メキシコ五輪の100mで日本記録を出して、翌年、僕と同期でロッテに入った飯島秀雄さんとか。
 
(中略)
 
盗塁でよく言われるのは「3S」、スタート、スピード、スライディングですが、このうち一番大事なのはスタートをスムーズに、思いきって切れるか。それだけですね。
 
(中略)
 
スライディングはいかにブレーキをかけず、低い姿勢でタッチをかいくぐるか。スピードは、塁間三秒くらいで実はみんなそう変わらないんですよ。
 

 
盗塁は眼と、走りだす勇気だと思っています。

次のページでは、福本さんの「スタート」を研究するきっかけになったエピソードを紹介します。